平静の祈り 〜コロナの時代の不安を乗り超えるヒント〜

 新型コロナウィルス感染症による日常生活への影響が長期化しています。先行きの全く見えないなかで自ずと募る不安やストレスもまた、心や身体にじわじわと影響を及ぼします。
 前回のブログでは、そんな時期への対処のヒントとして、マインドフルネスを紹介しました。今回は、物事の受け止め方をしなやかにし、心の安寧と変化に対する勇気を得るヒントとして、『平静の祈り』を紹介します。

God, grant me the serenity to accept the things I cannot change
The courage to change the things I can
And the wisdom to know the difference

神様、私にお与えください 自分に変えられないものを受け入れる落ち着きを
変えられるものは変えていく勇気を そしてふたつのものを見分ける賢さを
(平静の祈り/Reinhold Niebuhr)


 この祈りの言葉は『ニーバーの祈り』とも呼ばれています。メリカの神学者ラインホールド・ニーバーが1943年の夏にアメリカの山村の小さな教会で説教したときの祈りの言葉とされていますが、諸説あるようです。アルコール依存症、薬物依存症や神経症などを克服するプログラムに採用されたりして広く知られるようになっているので、ご存知の方も多いかと思います。(英文や日本語訳にも様々なバージョンがあるようです。ウィキペディア等に詳しく紹介されていますので、ご興味があれば調べてみてください)

 私たちは、自分ではどうすることも出来ないこと、本来は自分自身の問題ではないことなどについて、それがさも自身の課題であるかのように抱え苦しんでいます。寧ろ、私たちの悩みとして認識することは、実際には自分には変えることのできない範疇の事柄であることが多いようです。

 例えば、制御できない「怒り」に苦しむ人たちに向けたアンガーマネジメントのプログラムでは、その感情の原因の所在が、自分の範疇の問題なのか、それ以外の範疇ものなのか(=自分の怒りによって変えられることと、変えられないことがあること)に気付くことを大切にします。

 また、最新の第3世代人認知行動療法のひとつACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)では、精神的な苦痛の原因の多くは、変えられないこと受け入れられないでいる状態(「認知的混同」、「体験の回避」などの状態)とし、そこで生じている自分の状態をまずは受け入れ、自分の一部と認めること(Accept)を説いています。

 そして大切なことは、受容することで生まれる落ち着きや新たな自由からこそ、「変えられるものは変えていく勇気」が生まれるということです。本当に自分ができることに全力を尽くそうという気づきから新たな行動が生まれ、その微かな行動の変化からまた新たな希望が湧いてくるのです。

 カウンセリングの祖といわれるカールロジャースが「興味深いパラドックス(逆説)だが、あるがままの自分を受け入れることができた時にこそ、私は変わることができる」と語ったように、受容することは消極的な諦めの行為ではなく、積極的でパワフルな変化のきっかけを生む行為であると、心理学の世界でも考えられているのです。

 少し小難しい話も混じってしまいましたが、もしよろしければこの『平静の祈り』を時々思いだしてみてください。

少しでも皆様の日常の悩みが軽くなり、シンプルで生きやすくなることをお祈りしています。

(よかったら、こちらもご参考ください https://kiranah-heart.com/about/mindfulness/ )

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