コロナの影響もあるのでしょうか、私が講師を務めるマインドフルネス講座の受講を希望する方が、6月頃から女性を中心に急に増えだしています。(『マインドフルネス』の概説については、こちらをご参照ください https://kiranah-heart.com/about/mindfulness/ )
背景には、リラックスやストレス解消といった従来多かったニーズに加え、この機に自身の心の在り様に目を向けなおし、これからの変化に向き合える本当の心の落ち着きを取り戻したい…、そんなニーズがあるようにも感じています。今のこのような時期だからこそ、改めてマインドフルネスについて多くの人に興味を感じていただけたらと、そう思いながら書いています。
ちなみに、私のマインドフルネス講座では、1時間半のなかで、瞑想→呼吸法→ボディー・ワーク&ヨガ→ボディ・スキャン→瞑想→グラウンディング…という一連のルーティンをゆっくり、ゆったりと味わっていきます。ひとつひとつのルーティンはシンプルで誰でもできる簡単なもので、難しい説明や解説などもありません。
初めての参加者にお話しするのは、スタンフォード大学の教授であるスティーブン・マーフィー重松氏が著書『スタンフォード大学 マインドフルネス教室』のなかで「マインドフルネスを考えるひとつの簡単な方法」として紹介されている、A、B、Cの3項目だけ。
〈A〉は、Awareness(気づき)。自分の心や体の中で起きていること、すなわち、自分の思い、感情、感覚に気付いていること。
〈B〉は、Being(存在すること)。良し悪しの価値判断や批判、何かをしていなければならない等という考えを脇に置いて、ただその場の経験とともにあること。
〈C〉は、Clarity(明瞭さ)。自分に起こりつつあることに注意を向けて、それを望むようにではなく、あるがままにはっきりと眺めること。
参加者は、ただこのABCだけを意識しながら、ゆるやかな時間の流れの中で、簡単でシンプルなルーティンのフローに身を任せます。
さて、このマインドフルネスの良さは、簡単であるにも関わらず比較的すぐに効果が実感できるということ、そして長く続ければ続ける程にその効果が深まるとともに定着もよくなるということにあります。一般にマインドフルネスを一定の期間に渡って継続した場合に期待できる主な効果については、
・学習や記憶、創造性、感情のコントロールに関する脳の領域が活性化される
・不安、不眠、その他の精神的な困難を改善する
・慢性的な疼痛やその他の身体的な症状を緩和する
・思いやりや共感などの心理的な機能が向上する
などといったことが挙げられています。
例えば、私の講座に初めて参加される方に多い特徴として、呼吸の浅さと速さがありますが、このことをまず実感として知って貰ったうえでルーティンをゆっくりと体験することで、自然と呼吸が深く長いものに変化していきます。そして、講座が終わるころには今までに感じたことのない心身の緩みを自覚し、深いリラックスを味わいます。
先月講座に初めて参加された方の場合は、「家に帰った後、とても勉強がはかどった」という感想を述べられていました。そして、その方が2回目を終えた後には、「今回も脳がスッキリして気持ち良かった」、「身体に意識を集中させると、今まで感じたことのない血の流れる感覚や筋肉の感覚があり、これまで自分が思っていた集中とは違う感覚があった」と気付きがあり、更に「これが淡々とやるという感覚かもしれない」、「この感覚でやれば、パニック発作も出ない気がする」と、心身の課題に対しても改めて向き合い直せる心の状態(自己効力感の回復の兆し)を語り始められました。
勿論、効果の出方やスピードは人様々ですし、向き不向きもあります。先週に初めて参加された別の方の場合の様に「体がほぐれたおかげでお腹の調子が良くなった」と、とても身体的な効果をまず先に実感される方もおられます。マインドフルネスというと、瞑想中心のイメージが強いのですが、本講座のように身体的アプローチとのバランスを工夫したものの方が、とっつきやすく楽しいという方が比較的多いのも事実です(リラックス系のヨガに近い感覚でしょう)。また、講師がガイドになってグループで実践する方が、独りで実践するよりも効果が出やすく感じるというような、環境的な要素の影響も勿論あります。
上記で紹介した『スタンフォード大学 マインドフルネス教室』の中で、著者はマインドフルネスについて、「自己観察、自己探求、行動という体系的プロセスを通して、自分と言う存在の豊かさに触れる実用的方法なのだ … 自分自身の知恵や生命力とのつながりを取り戻す、単純だが強力な方法である」と、その本質を端的に表現しています。例えば、呼吸を少しの間ゆっくりと意識する、日常の簡単な動作をしながらその動きのひとつひとつに静かに意識を向け続けてみる、等々実践することのひとつひとつは極めてシンプルですが、瞑想も含めて、その継続で得られる効果は強力です。インターネットや書籍にはこうした様々な方法が紹介されています。もし、記事を読んで少しでも興味を持っていただけましたら、まずは独りできる簡単なことからでも日常生活のなかに取り入れてみられることをお勧めします。(注:精神疾患の既往がある場合は、念のため事前に担当医師への相談をしてから始めて下さい)
ps. マインドフルネスが何故そうした効果を発揮するのか? 今解明されつつあるそのプロセスについても、また機会をみつけてご紹介してみたいと思います。
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